ごく普通の女の子が成長していく様子が丁寧に描かれる。美しく可愛くてなにより可笑しい映画だ。

アメリのどこがごく普通の女子だって??



だって、厳格な医師である父親とはほとんどからだの接触がなく、幼い頃父親から心臓が悪いと誤診されたため、学校には行かず、自宅のホーム・スクールで学び、友達は一人もいなくて、口うるさい母親が考えられない事故でアメリの目の前で死んでしまい、現実逃避が日常になってあれこれ夢想しがちな、ごく普通の内向的な女の子。

ほら、これを読んでいる女子はすぐに自分自身のことだとわかるでしょう!!

わかるよねえ!俺が女子だったら、この映画はまさに自分自身のことだ、と思ったぜ。

アメリに固有の条件、例えば父が医師だとか、母親が事故で死んでしまうとか、そんなことを丹念に除いていくと、ほら、内向的なごく普通の少女であるアメリが現れてくる。

そこがこの映画のキモだ。

見かけのエピソードがめまぐるしく大笑いのうちに進むので、つい、不思議ちゃんアメリ、と思いがちだが、アメリの逡巡はどんな男でも女でも持っている葛藤なのだ。そこがしっかりできているから、どんな荒唐無稽なエピソードが繰り広げられても容認できるという仕掛けだ。

舞台はモンマルトル。街の色彩が素晴らしい。アメリの服の色、店の内装、部屋の調度など日本では見ることのできない色の組み合わせが目を楽しませる。

たくさん詰まったエピソードもとても面白い。何度も大笑いする。楽しい映画です。

アメリの、オドレイ・トトゥウは、同じ監督作品の「ロング・エンゲージメント」で見ました。チャーミングな目の表情に惹きつけられます。エスプリを感じさせる、知性ある女優さんだと思います。