映画は、ジェットコースター・ムーヴィー。追いかける強力な敵と、とにかく走って走って逃げる主人公が痛快だ。敵も味方もよく走る。130分もあっという間に過ぎる。面白い。舞台は、マヤ文明時代のユカタン半島。



中南米の古代文明はもの凄い。

「ライフ人間世界史」という挿絵や写真が豊富なシリーズが子供の頃から家にあった。その中の「第17巻 古代アメリカ」に魅了された。

ユカタン半島に残る不思議な古代文明の数々に好奇心がそそられる。詳細がまったくわかっていないオルメカ続の遺跡とか、ジャガーの表情を浮かべた奇妙な人物像とか。見れば見るほど知られていない文明や民族に惹かれた。

その中に、まさに「血も凍る」祭祀の様子が描かれた画像があった。マヤの遺跡で見る巨大な階段状の祭壇で行われる儀式だ。この映画にその場面が再現される。詳しくはここに書かない。ネタバレになってしまう。図書館で「ライフ人間世界史」を見るといい。



俺が「ライフ人間世界史」で見た場面の再現だ。インディ・ジョーンズでも似たような場面があったが、このメル・ギブソンの再現の方が強烈だ。

ただ、俺が不満に感じる点がある。

「パッション」でもそう思ったが、出てくる人物の感性があまりに「現代人」のものなのだ。例えば、俺が恐ろしい、と思う場面で、主人公たちが感じる恐怖は、俺と同じ現代人の感覚だ。「ライフ人間世界史」で見たその場面の登場人物たちには現代人の「自我」なんてない。「個」の尊重なんていう概念なんか無い世界だ。だから、「ライフ人間世界史」の画像はいっそう恐ろしく感じる。

恐怖を感じず、むしろ「法悦」の状態で行われる「祭祀」。そのありさまが血も凍る画像となっている。詳しく語れないのがもどかしいが、この映画で表現される以上の「血も凍る」恐怖の画像が「ライフ人間世界史」には出ている。なんともあっけらかんと、長閑な筆遣いで描かれている祭祀の様子。

もの凄いよ。メル・ギブソンでも映画で描けない祭祀の様子。歴史の事実は娯楽ではないからね。

「ライフ人間世界史 17巻 古代アメリカ」。手にとって見る価値大ありです!!