まくらに三平のエピソード。死の床でもおどけている半狂人のもの哀しい話し。

湿っぽい。

こぶ平の正蔵にはカラッとした明るさがない。おどおどと甘ったれた雰囲気がただよう。

超売れっ子だった祖父、父二代の芸能家族の家系。毛並みの良さは間違いない。

こぶ平の正蔵自身の子供のエピソードが唯一笑った箇所だ。「あたかも」という言葉を使って文章を作りなさい、という問題にこぶ平の正蔵の息子はなんと答えたか。

これはこぶ平の正蔵のネタだから、ここでネタはわらない。実際に高座で聞いてくれ。

俺の聞いた高座ではいわゆる「子わかれ」「子は鎹(かすがい)」の下の部分を演じた。くすぐりの少ない、湿っぽい人情噺の大ネタだ。

それが実に退屈きわまりない。登場人物になんら魅力を感じない。

江戸言葉がさすがにうまいな、と思うくらい。

習った落語でしかない。

談志のいう「伝統を現代に」の精神とは大きくかけ離れた聞くに堪えない退屈な芸。

正蔵という大看板は残念ながら当代で廃る。

ぺやんぐの桂文楽もまったく見かけない。分不相応の大看板は本人にとっても負担だ。

こぶ平はこぶ平にもどって欲しい。ヒロミにいじられるこぶ平が大好きだ。