「ストレイト・ストーリー」はデイヴィッド・リンチの他の作品同様に、画面の隅々、音楽の設定まで美意識が働いている。

アメリカの中西部の乾燥地帯を走り始めるトラクタ。仲間や娘のあきれ顔を無視して悠然と畑の真ん中をまっすぐ走っていく。

アコースティックギターの単純なアルペジオが聞こえてくる。シンプルで胸を突く美しさ。フィドル(カントリースタイルのヴァイオリン)によるメロディが重なってくる。

ブルースハープのメロディも似つかわしい。

最後の場面、いよいよライルに会う直前、聞き慣れたストリングの響きの中に、肺腑をえぐるようなチェロのソロが聞こえてくる。

今までチェロは聞こえてこなかったはずだ。

アルヴィンの心臓の鼓動が感じられるような音楽だ。

感心した。