仕事で横浜の某所にあるAAに行ったことがある。

AAとはアスキーアートのことではなくAlcoholics Anonymousのことだ。

Alcoholics Anonymousは何かというと、断酒を志すものがお互いを励ましあいながら断酒状態を維持していけるように考えられた相互啓発組織とでも言おうか。

カトリックの聖職者たちがアルコール依存に陥り、その状態を克服するために試みたことが始まりだと言われる。

ディズニー映画の「ファインディング・ニモ」に出てくる、魚を食べないようにしている鮫の集会の描写がある。あれは完全にAlcoholics Anonymousの集会のパロディだ。あれは爆笑だった。

酒を飲まなくなって変わった人生を語り合ったり、酒の上でどのようなひどい失敗をしでかしたかなど、とにかく語り合って、酒を飲みたくなる瞬間をやり過ごす。誰でもいつでもその場所に行ってよいように場所がしつらえてある。本名や仕事を言う必要はない。それが Anonymous の意味だ。

俺が取材に行ったときも、数人のホームレスっぽい人たちがいて思い思いに時間をすごしていた。コーヒーやスナック類が用意されていて、煙草も吸ってよい。その中の一人が、俺にアルコールで失われた半生を語ってくれた。坊主刈りの年配のホームレスだったが、横浜のAAの管理人というか代表だ。

「アルコール依存は、この吸いかけの煙草と同じ。」その人はそう言って煙草を見せた。

「ここまで吸ってある煙草の火を消せば、この長さ。また火をつけたら根元まで燃えていく。これと同じで、酒をやめているということは、火が消えているのと同じ。また飲み始めるというのは、この吸いかけの煙草に火をつけることと同じだ。新しい煙草に火をつけるのではなく、根元まで吸ってしまったら死ぬしかない」

このたとえ話が印象的だった。

こんな話を聞いて給料をもらっていた時期があったなあ。懐かしい。