どちらもドキュメンタリ・タッチでハンディカムで撮ったかのような映像が多用され、酔ってしまった。


久々の休日、映画三昧と思ってこの二本立てを企てた。

「プレシャス」は、宝物と名づけられた少女の自立物語。父親からの性的虐待により15歳で子供がいる。母親からも虐待を受け続け、逃避的な妄想に浸ることでかろうじて生き延びている。長女はダウン症。本当のダウン症の子供が出てきて可愛らしい。

主人公や周りの環境があまりにすさまじいのでうっかり笑えない雰囲気の館内だったが、コミカルなやり取りや、傑作なギャクがちりばめられていて結構笑った。面白かった。母親の投げつけるひどい言葉が、どう聞いてもラップになっていたのが最高だった。拍手したくなった。罵詈雑言、汚い言葉の連射砲だ。

救いのない展開だが、プレシャスが自分自身をプレシャスだと思えるところまで成長する内容がよかった。

ここに描かれている貧困と悲惨は現在の日本の社会にもたくさんある。友人のケースワーカーは、130件のケースを抱え、どんな状況を聞かされても、ああそうですか、としか思えないと言っている。すさまじい現実は俺たちのすぐ隣りにある。

「第九地区」も面白かった。ぐるぐる画面と、汚らしい描写に吐きそうになったが、なんとかこらえて最後まで見た。この映画の主人公の不快さを体感したような感じだ。

平凡なボンクラ主人公が、事件に巻き込まれ、英雄的な行動までするようになっていく成長物語。事件と言うのが、不可解なエイリアンたちとの関わり、というのがうまい着想だ。

テーマとしては、南アフリカで行われてきたアパルトヘイトが連想される。差別されるのは、「エビ」とあざけられるエイリアンたちだ。人間から見れば、醜く、ぶざまな容姿のエイリアンが執拗に差別される。

そこに関わっていく善意の(つもりの)白人の主人公がどれほどの目に遭い、どのような希望を持ち、差別される側になっていくのか、サスペンスとしてひきつけられた。

それにしても二本とも、爽やかな終わりではないので疲れたぜ。頭痛くなるし、吐き気はするし。

さっぱりした鶏のスープ麺が食べたくなって、中華料理屋に行き、青菜と鶏の湯麺をたべて落ち着いた。